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石原学長と保健科学部卒業生の懇談会を開催しました2
岩渕氏勤務風景
学長 今後、技大にどんな学部・学科ができると良いと思いますか?
森山 アクセシビリティ関係の学部・学科があると良いと思います。私が技大に入って良かったと思ったことは、障害に関する情報や知識を得たことによって「周りに伝えること」がしやすくなった点です。これもアクセシビリティの1つだと思いますが、人財を受け入れる企業も、障害者に対して必要な配慮をしていかないといけない。でも手探り状態の企業も多いので、障害補償やアクセシビリティをより理解できていると、会社としても役に立つのでは、と感じています。
学長 視覚や聴覚に障害がある人が自分の障害を客観的に理解して、周囲にも「どういう配慮があれば仕事ができますよ」と説明できると良いですよね。岩渕さんは健常者に囲まれて働いていますが、周囲への説明に苦労したり、自分で工夫したりしていることはありますか?
岩渕 モニターで管理されている患者さんに対しては、どうしても時間を要したりリスク管理が充分にできなかったりという場面は正直ありますね。ただ、それを踏まえた上で、ほかにやれる仕事があることを理解していれば良いのかなと。見えないものは見えない、できないことはできない、ということをはっきり伝えて、明確にした上で周りに理解してもらい、仕事をすることが大事だと思います。
学長 岩渕さんは、社会に出てそれができるようになったのかな? 大学やそれ以前にできるようになったのかな?
岩渕 はっきり主張できるようになったのは大学に入ってからですね。ただ、技大の中というより、学外の部活で人とコミュニケーションを取っていく中で、「ああ、障害のことを当たり前に言うことでうまくやっていけるんだな」と感じました。
学長 前田さんは、周囲に対する障害の説明について、学生にどういう風に指導していますか?
前田 健常者の方々は、見えない人の「何ができない」より「何ができるのか」という点に注目しているように感じます。そこで盲学校の中で必要になってくるのは、「じゃあ、どうしたらできるのか?」ということ。そうしたノウハウを教えて、社会に出た時に「こうすれば僕はできます」を言えるようにしないといけないと思っています。例えば、「パソコンを使った文書処理はできます。インターネットやメールの操作も問題なくできます」とか。自分がどんな手段を使ったら何ができるのかを、ちゃんと積極的に説明できるようになってもらうことを意識して授業しています。
懇談会中の石原学長
学長 最後に、技大への入学を目指す人や学生へメッセージを。
森山 大学進学は一つの道ですが、ゴールではないと思います。将来自分がどうなりたいのか、その先を見据えて模索してもらえたらと思います。在学中の学生に対しては、障害保障と環境が整っている点は間違いなくメリットです。就職に関してもサポートが手厚い。でもそれに甘えるのではなく、効率的に視覚障害者への理解が進んでいる企業を見つける、といった手段としてもらえたらと思います。
岩渕 環境が良いことに甘えることなく、もっと外を見て動いてほしい、というのが学生への希望です。実習生を受け入れた中で、「学校ではどうやっていたの?」と聞くと、「拡大してもらっていた」とか「読書器を使っていた」と言うんです。でも、現場では自分でやっていかないとならない。だから、自分のことを理解して対応策を考えるなど、自分なりの工夫をすることを学生のうちに身に付けてほしいです。
前田 :これだけ素晴らしい学習環境が整っている学校は全国探しても他に無いと思います。その上で、せっかく入ったのならば「自分で進んで何かを調べる、何かをやる」ということを大事にしてほしいです。自分から進んで意欲的に学んでこそ大学生活だと思いますから。これから技大を考えられる方は、やはり実際に見学してみて、体感することが一番大事かな。
学長 もし進路に迷ってる学生がいたら、ぜひ技大を勧めてくださいね(笑)。みなさん、本日は貴重なご意見をいただき参考になりました。長時間ありがとうございました。
参加いただいた卒業生の方々
- 左:前田 智洋氏 (筑波大学附属視覚特別支援学校鍼灸手技療法科教諭。筑波技術短期大学視覚部鍼灸学科 1998年度卒業)
- 中:岩渕 慎也氏 (筑波大学附属病院リハビリテーション部理学療法士。筑波技術短期大学視覚部理学療法学科 2004年度卒業)
- 右:森山 夏気氏 (株式会社日立産業制御ソリューションズ勤務。筑波技術大学保健科学部情報システム学科 2016年度卒業)